広島在来浜茶が産まれた背景
浜茶が産まれたきっかけはデベラ
2016年TEA FACTORY GENを立ち上げた当初からの代表的なお茶と言っても過言ではない広島在来浜茶。広島ならではのお茶を作りたいと思い悩んでいた頃、私たちの店舗がある広島県尾道市で冬に見た薄っぺらい魚が干されていた光景でした。それは江戸時代から作られているデベラという魚を海の潮風に当てて5日間ほど自然乾燥させている姿でした。近所に住む生粋の漁師さんに伺うと「潮風に当てて干すと甘みが凝縮して塩味もつくけ、ええんよ」とのこと。
その言葉に着想を得て、もしかするとお茶も潮風に当てて干したら、面白いお茶になるのでは、とその時から浜茶づくりが始まりました。
浜茶の名前の由来
浜茶の名前も当初は島茶、潮茶など色々な名前を考えましたが、この辺り(尾道)で海側のことを浜といったり、江戸時代は塩田も盛んだったので当時塩田の豪商のことを浜旦那と呼んだりしていました。色々と考えた結果、浜茶と名付けましたが後々広島県北部や島根の方から浜茶とはカワラケツメイのお茶のことですか?と良くお声を聞くことがあり、調べたら豆科の植物をお茶にしたもののことをその辺りの地方では「はまちゃ」と言うそうです。
失敗の連続
さて、初めから順風満帆に始まったかというと全くそうではありません。潮風にあてるにしろお茶を干すところが全く見当たらなく、まずはブルーシートを敷いて尾道市向島の砂浜で干し始めました。数時間するとなんとお茶が砂まみれになっているではありませんか。その年の浜茶はもちろん全て廃棄、泣く泣く茶畑に戻しました。
その次の収穫の年ですが、相変わらず干す場所がなく困っていたら尾道の漁業組合のトップをされていた方が屋形船を持たれていてその屋根を使っていいよ、とのこと。早速茶摘みしたお茶を屋形船の上にのせてお茶を干し始めました。毎日様子を見ていると段々とお茶が少なくなってきているではありませんか。そうです、強い風が吹く毎に茶葉がひらひらと撒き餌のように海に流れていってました。そして干す面積が狭い上に沢山の茶葉をのせたことで下の方に熱と水分がこもり、カビてしまい、その年も泣く泣く廃棄しました。
そしてついに生口島というところに広大な、しかも海に近く、砂も入らなく、海に流れていかない場所をレモン農家さんに紹介して頂きそこが浜茶を作る定位置になりました。
浜茶の原料
浜茶の原料となるお茶はお番茶です。樹齢が60,70年ほど無肥料・無農薬の在来茶を使用しています。お番茶とは新芽が大きくなった葉っぱのことを指します。広島県の世羅では茶摘みをした後、釜で炒ってむしろで揉んでお茶にしていたという話を古老から教えて頂きました。中国四国地方は古くから多様な番茶が作られる産地でした。広島県では寒番茶、岡山県では美作番茶、徳島県では阿波番茶、愛媛県は石鎚黒茶などなど。瀬戸内ならではの番茶が勢揃いしている興味深い地域です。
浜茶の作り方
3月末に冬越しした茶葉を枝と葉っぱ丸ごと茶摘みします。その後生口島の瀬戸田に運び、1週間から10日間天日乾燥させます。初めは緑の茶葉ですが、段々と陽に焼けて赤く変化していくとともに複雑な酸味や香りが出てきます。雨が降る前にはその都度茶葉を取り入れまた晴れると天日を開始させます。2024年の春は雨がとても多く中々乾燥が進まずに10日間ほぼ付きっきりで茶葉の様子を確認しながら乾燥させました。その後茶工場で軽く焙煎した後、枝と葉っぱを剪断し、粉を篩にかけて仕上げています。
浜茶の何がすごいのか
浜茶が凄いところは、お茶を揉んだり、乾燥させる際に全く化石燃料を使わないところです。お茶を作る上で多用する化石燃料は重油、ガス、電気です。皆様が思っている以上に環境に負担をかけてお茶は作られています。お茶に限らずともどのような加工品であれ同じような状況であると考えられます。ただ浜茶を作る際に使うエネルギーは90パーセント太陽光。浜茶はほとんどお天道様の力だけで作り出しており、サステナブルやSDGsと世間が騒ぐ前から行っている極めてシンプルな作り方が凄いと思っています。
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