厳しい世羅の冬が育むお茶の魅力 — 天・地・人が織りなす至高の一杯

広島県内でも地域ごとに大きく気候条件は異なります。
私たちが作るお茶は標高300~450mの世羅町です。それがどのようにお茶の栽培やフレーバーに影響するのかお伝えしたいと思います。

  1. 広島県の地域差について
    広島県は南北に広がっており、気候も場所によって大きく異なります。たとえば、瀬戸内海側は一年を通して温暖で、雪がほとんど降らないため、一般的には温暖な気候が特徴です。一方で、内陸部や高地に位置する世羅のような地域では、気温が低く、冬には雪が降るという厳しい環境にあります。

  2. 世羅の冬の厳しさ
    特に世羅は、冬の夜の気温が-9度にもなるほど寒く、雪が積もることもある地域です。こうした厳しい気象条件は、植物にとって大きなストレスとなり得ますが、その環境下でも茶の木は生育を続けています。

  3. お茶の耐寒性と春への準備
    寒さや雪といった過酷な冬の環境にもかかわらず、世羅のお茶が見事に耐え、その後の暖かい春に向けた生育準備をしています。厳しい冬を乗り越えることで、春に向けてしっかりと成長する力を蓄えています。

  4. 成長の抑制と旨味成分の蓄積
    寒い環境では、茶樹の成長がゆっくりになるため、急速な拡大よりも、葉そのものに含まれるアミノ酸やカテキン、ポリフェノールといった旨味や香りのもととなる成分がじっくりと蓄積されます。特に、厳しい冬を乗り越えた後の新芽は、濃縮された風味を持ち、上質なお茶となります。

  5. 冷気ストレスによる防御成分の生成
    低温は、茶樹にとって一定のストレスとなりますが、これに対抗するために植物は自身を守るための抗酸化物質やその他の防御成分を生成します。これらの成分は、お茶に独特の深みや複雑な味わいを与えると考えられています。

  6. 雪による保温と徐放水の効果
    冬の雪は茶樹の根を断熱し、急激な冷え込みから守るだけでなく、春先に雪解け水としてゆっくりと土壌に水分やミネラルを供給します。これにより、茶樹は安心して冬を越え、春の成長期に必要な栄養をしっかり吸収できるため、結果として生育が良くなり、風味豊かなお茶が生まれます。

  7. 冬を乗り越えた茶樹の強さ
    厳しい冬を耐えた茶樹は、その耐久力と適応力が品質に反映されます。寒さや雪という逆境を乗り越えて春に向けて新たな芽を出す茶樹は、ストレスを活かして味わいや香りの面で他の地域のお茶とは一線を画す、濃厚で個性的な風味を持つ傾向があります。

これらの要因が組み合わさることで、世羅のような厳しい冬を迎える地域で育つお茶は、他の温暖な地域で作られるお茶とは異なる、深みのある味わいや豊かな香り、そしてバランスの取れた旨味を実現しているのです。

ただしこれは茶畑が置かれた環境の話なので、お茶作りでとても重要な収穫工程と製造工程を忘れてはなりません。いくら畑でいい自然環境であったとしても、お茶作りで重要な収穫のタイミング、収穫の仕方、製茶の仕方、保存方法などが習熟できていないと元も子もありません。
せっかく寒い寒い冬を耐えたお茶の木の為に人ができることとしては、その素材をダイヤモンドの原石をダイヤモンドたらしめることではないでしょうか。
お茶作りの基本は「天・地・人」です。
天と地と人が素晴らしく調和した時に最高のお茶に仕上がるのです。